2020/05/16改定

三川坑とは・・・

三川坑は、三池港のすぐ東側に位置し、傾斜角11度、長さ2,000メートルの斜坑2本をもって有明海の海底採掘に使用された坑口です。1937(昭和12)年9月から開鑿(かいさく)が始まり、1940(昭和15)年6月から出炭を開始しました。

三池炭鉱の坑口としては割と新しい時代を生きた三川坑は、1997(平成9)年3月の三池炭鉱閉山とともに閉鉱となりました。

この三川坑では、歴史に残る出来事が二つ起きています。
一つ目は、1959(昭和34)年に発生した「三池争議」です。これは、エネルギー革命によって石炭産業が斜陽化する中、三池炭鉱の合理化を図るための大量人員整理によって発生した労働争議です。戦後最大の労働争議と言われ、この三川坑が激しい労使決戦の舞台となりました。
二つ目は、1963(昭和38)年11月9日に発生した炭じん爆発事故です。第一斜坑の坑内で石炭を運搬していたトロッコの連結部分が外れて脱線し、その衝撃で発生した火花が大量に蔓延した炭じんに引火して爆発しました。この事故は、死者458名、重傷者675名、一酸化炭素中毒患者839名を出すという、こちらも戦後最大の労働災害となりました。

現在、三川坑跡は世界遺産関連施設として毎週土日・祝日に定期公開されており、これらの史実を伝える場所として重要な役割を果たしています。
※ 2020年5月15日現在、新型コロナウィルスの感染拡大防止のため公開が中止されていますが、国の緊急事態宣言の解除を受け、5月23日(土)から公開が再開されます。

静態保存されている機関車たち

一方、鉄道ファンとして注目すべきは、三川坑跡の敷地内に静態保存されている4台の電気機関車です。いずれも三池炭鉱専用鉄道で活躍したもので、明治時代にアメリカやドイツから輸入した電気機関車も含まれます。鉄道ファンならずとも一見の価値がある大変貴重な電気機関車たちです。

屋根付きの場所で静態保存されている4台の機関車
  • 15トン級 B形電気機関車 5号機
    1908(明治41)年にアメリカのジェネラル・エレクトリック社で製造され、1910(明治43)年12月に三池港湾荷役用として購入されました。車体が小さいため、運転室への出入り口が設置されていないため、運転手は窓から出入りするのが特徴です。その外観から『ガメ』(大牟田地方の方言で「亀」の意)と呼ばれていました。
    → 詳しい情報はこちら
15トン級 B形電気機関車 5号機
  • 20トン級 B形電気機関車 1号機『シーメンス号』
    万田~三池港の電化に際し、1911(明治44)年10月にドイツのシーメンス・シュッケルト社から購入した機関車です。三池炭鉱閉山の直前は、上述の5号機とともに三池港駅の駅舎付近において展示される形で留置されていました。製造会社の名前から「シーメンス号」と呼ばれています。
    → 詳しい情報はこちら
20トン級 B形電気機関車 1号機『シーメンス号』
  • 20トン級 B形電気機関車 5号機
    シーメンス・シュッケルト社から購入した1~4号機をモデルとして、1915(大正4)年12月に三菱造船が製造した機関車です。同じ時期に製造された11号機および12号機は、三井化学専用線において今なお現役で活躍しています(2020年4月21日現在)。
    → 詳しい情報はこちら
20トン級 B形電気機関車 5号機
  • 45トン級 B-B形電気機関車 17号機
    1936(昭和11)年4月に製造された45トン電気機関車です。このスタイルの機関車は戦中・戦後に多く作られ、日本各地の鉄道で活躍しました。この機関車のように、運転室部分が車体の真ん中にある凸型ボギー車を通称「東芝標準型」と呼びますが、この機関車は東芝の前身である芝浦製作所製ですので、東芝標準型の原型と言えます。
    → 詳しい情報はこちら
45トン級 B-B形電気機関車 17号機

また、三川坑跡の管理棟内にある売店で500円支払えば、4台全ての運転室を見学することができます。特に、17号機の運転台に座ればその大きさを実感することができますので、三川坑へお越しの際はぜひ体験してみてください。なお、どれも貴重な機関車ですので、見学の際は丁寧に取り扱いましょう。

1号機の運転室
運転室の見学料500円を支払えば、この硬券がもらえる。

今なお残る人車と線路

三川坑跡には、主に人員昇降に使用された第二斜坑、入昇坑口および地下通路、第二巻揚機室などが残されていますが、第二斜坑の入り口には、炭鉱マンを乗せて走った人車が残っており、また、第二斜坑の外側には人車の点検場や線路も残されています。

閉山から20年以上の時が経ち、これらの遺構も錆びてはいるものの、当時の繁栄と時代の流れを感じることができます。

第二斜坑の入り口に残る人車
第二斜坑から外を望む
第二斜坑入り口に敷かれた線路

アクセス

大牟田駅前バス停から、西鉄バス2番系統「荒尾駅前」行きに乗り、「三川町一丁目」で下車。そこから徒歩3分。