三井化学への貨物受け渡しのため、入換用として大牟田駅に常駐していた岡山機関区のHD300-27。2020(令和2)年5月7日に大牟田専用貨物(以下、「大牟田専貨」という。)の運行が終了した後も、同機は大牟田駅の貨物取扱線に留置されていました。動く様子のない同機でしたが、大牟田専貨の終了から19日が経った2020(令和2)年5月26日、同機はとうとう大牟田を去って行きました。
私は、HD300-27が大牟田駅から無動力回送されていくところを観察することができましたので、以下にその様子をまとめました。

牽引機の大牟田入り

2020(令和2)年5月26日 午前8時頃、8151レのスジで門司機関区のEF81 502が大牟田駅に入線しました。このEF81 502が、8152レとしてHD300-27を無動力回送することとなります。
EF81 502は、大牟田駅到着後すぐに貨物3番線へと転線。その後、HD300-27もEF81 502の連結手前の位置まで自走し、8時30分には下の写真に示す配置となりました。8152レとして出発するための入換作業は10時20分過ぎからとなるため、しばらくこの状態で待機です。

入換作業まで待機するEF81 502とHD300-27。
EF81 502は、元々日本海側縦貫線用として増備された機関車だ。
9時05分発、熊本行きの普通列車(415系1500番台)が通過していく。

8152レの入換作業

10時20分頃、EF81 502の始業点検が始まりました。同時に、HD300-27にも係の方が数名入り、出発の準備をされていました。

始業点検中のEF81 502。下り方のパンタを上げ、前照灯・尾灯が点灯している。

10時35分、連結作業が始まりました。操車係の方の誘導により、EF81 502がゆっくりとHD300-27に近づいていきます。ガチャンという連結音の後、少し前に引いて連結オーライ。3分ほどしてから、ブレーキテストが行われました。

後方を目視しながらHD300-27に近づいていくEF81 502。連結まであと5m・・・。
連結まであと3m・・・。
連結オーライ。
その後、ブレーキテストが行われた。
ブレーキテストが終了した8152レ。10時43分発、八代行きの普通列車(817系)を見送る。

連結作業が完了した8152レは、10時46分、貨物3番線から下り引き上げ線へと転線しました。HD300-27が常駐していた貨物取扱線ともお別れです。

短いホイッスルとともに、ゆっくりと動き出した8152レ。
EF81 502が推進してHD300-27を押し出します。

下り引き上げ線まで移動した8152レは、10時48分、上り5番線へと転線します。

下り引き上げ線で待機する8152レ。
上り5番線を北上していく。
大牟田駅3番ホームからは、数名のファンが見守っていた。
入換作業中は、HD300-27のデッキでも操車係の方が安全を見張る。
大牟田駅西側にある西鉄電車のホームには、7000形が発車を待っていた。西鉄と顔を合わすのも、これが最後。

入換作業も無事に終わり、あとは出発を待つだけとなりました。出発まであと40分ほどです。この日はあいにくの曇り空で、小雨がパラついてきました。

5番線の所定位置に着いたところで入換作業完了。11時50分頃の発車までしばらく待機となる。
待機中、3番線を熊本車両センターのキハ47が通過して行った。
1番ホームから、8152レを望む。
いつもは貨車の先頭に立っていたHD300-27。無動力で牽引機の次位につくのは、少し寂しげだ。

さようなら、HD300-27

11時45分過ぎ、いよいよHD300-27が大牟田を発ちます。定刻通りに大牟田駅を発車した8152レは、ほどなく三井化学専用線との並走区間を通過します。私は、HD300-27の最後を見送る場所として、三井化学専用線の旭町駅事務所付近を選びました。ここは、HD300-27が毎日通った「仕事場」です。小雨が降る中、大牟田駅方面から近づいてくるEF81 502の前照灯がファインダー越しに見えてきました。
8152レが三井化学専用線との並走区間に差し掛かったとき、速度が若干緩やかとなり、EF81 502からは短いホイッスルが。運転士さんによる粋な計らいでしたが、私の目には、EF81 502がHD300-27の代わりに ”さよなら” を告げたかのように映り、とてもドラマチックな展開となりました。

HD300-27が仮屋川へ進入するときは、いつもこの位置で一旦停止して旭町駅事務所に挨拶していた。
短いホイッスルを鳴らし、緩やかな速度で三井化学専用線との並走区間を通過する。HD300-27にとって、ここは思い出の場所。さようなら、HD300-27。

HD300-27の帰区により、大牟田専貨の長い歴史に幕が下ろされました。大牟田駅常駐の機関車が居なくなったことは寂しい限りですが、次の新天地で活躍するHD300-27の姿が見れることを楽しみにしたいと思います。