2020/05/08改定

※ 三井化学専用線は、2020(令和2)年5月7日をもって、運行が終了しています。

1997(平成9)年3月の三池炭鉱閉山後、三池炭鉱専用鉄道線の大部分は廃止され線路や設備は撤去されましたが、旭町支線と呼ばれた宮浦~旭町~仮屋川操車場の1.8キロメートルについては、三井化学株式会社(以下、「三井化学」という。)・大牟田工場において使用する原材料の搬入等のため、三井化学専用線として当時の機関車を活用した貨物列車が継続して運行されてきました。

しかし、原材料の搬入が船とトラック輸送に切り替えられることとなり、2020(令和2)年5月7日をもって、同専用線の運行は終了となりました。

大正生まれの電気機関車が現役で走る姿を見られなくなるのは寂しい限りですが、これも時代の流れです。100年以上働いてきた電気機関車の労をねぎらい、運行終了直前であった2020(令和2)年春の姿を、一日のフローとしてここに紹介します。

運行終了時まで在籍していた電気機関車

運行終了時、三井化学専用線には以下5台の電気機関車が在籍していました。

第1便~第2便

午前8時頃、宮浦駅に停車している45トン級 B-B形電気機関車(以下、「45t電機」という。)の始業点検が始まります。三井化学専用線は日中の時間帯しか稼働しておらず、本線走行や入換時は前照灯が点灯されないため、始業点検は前照灯の点灯状態を見ることができる良いチャンスです。
10分ほどの始業点検を終えた45t電機は、いったん南側(旭町方面とは反対方面)へと機回しされます。ポイントの切り替え後、これから牽引する返空コキの東側を北上し、返空コキの仮屋川操車場方に連結されます。連結後は、そのままコキを推進して宮浦駅事務所付近までバックします。8時20分頃、ポイントが切り替わり閉塞が取れたところで第1便として仮屋川操車場へと向かいます。

始業点検を受ける18号機。
返空コキの先頭立つため、宮浦駅構内を北上する18号機。
返空コキを推進して、駅事務所付近でいったん停止。

進行方向右手にショッピングモール(ゆめタウン大牟田)を眺めながら直進すると、旭町1号踏切を通って国道208号線を横断します。この旭町1号踏切は、「第一種手動踏切(第一種乙)」といい、踏切保安係(踏切警手)が手動で操作する踏切で、平成17年3月16日の国土交通省の調査によると全国に59箇所しかない非常に珍しい踏切です。

朝の国道208号線を横断する19号機。この光景は大牟田の名物である。

旭町1号踏切を通過した列車はガーデンホテルの脇を通り抜けながら右へとカーブし、左側に現れるJR鹿児島本線および西鉄天神大牟田線と並走します。右カーブを終えて直進すると進行方向右手に旭町駅事務所の建物が見えてきます。そこを通過するとすぐに仮屋川操車場です。

旭町駅事務所横を通過する19号機。仮屋川まであと少し。

仮屋川操車場は4本の線路が配線されており、第1便は下図中の③に入線します。その後、牽いてきた返空コキを切り離した45t電機は、単機となって線路端まで北上します。スプリングポイントを渡ったところで進行方向を変え、下図中の②へ転線して南下します。そこで一旦停車し、出発準備が整ったところで第二便となり今来たルートを辿って宮浦駅へと帰ります。

仮屋川操車場 配線図
仮屋川操車場北側より、操車場内を望む。
第2便として宮浦へ帰って行く19号機。
単機で旭町1号踏切を通過する。

宮浦駅に進入するすぐ手前には東泉町2号踏切があります。この踏切は打鐘式警報器を持つ踏切であり、今ではとても珍しい踏切です。

東泉町2号踏切を通過する18号機。

宮浦駅では駅事務所付近で停車し、パンタグラフを下ろして朝の1往復目は終了です。

HD300による構内貨物の仮屋川到着

午前9時10分頃、HD300を先頭とした構内貨物列車がJR大牟田駅から仮屋川操車場へやってきます。仮屋川操車場は、JR大牟田駅の北側約1.5キロメートルのところに位置していますが、ここは大牟田駅の構内扱いとなっています。

JR大牟田駅からやってきたJR貨物のHD300。

HD300牽引の列車は、上図中の①に入線します。牽いてきたコキを切り離した後、単機となって線路端まで北上します。スプリングポイントを渡ったところで進行方向を変え、上図中の②へ転線して南下します。その後、上図中の③に転線して、第1便が運んできた返空コキを連結します。この後、JR大牟田駅と帰って行きますが、出発が午前10時20分頃なので、それまでこのまま待機です。

仮屋川操車場で出発を待つHD300。

第3便~第4便

第2便として宮浦駅に帰った45t電機は、午前9時20分頃に再びパンタを上げ、そのまま北上して第3便として仮屋川操車場へ向かいます。
仮屋川操車場に到着後、上図中の①に停めてあるHD300が運んできたコキを連結し、午前9時25分頃、第4便として宮浦駅へと帰っていきます。

宮浦駅へ進入した列車は、本線から進行方向一本左の線路へ転線し、所定の位置で停車します。ここで、45t電機はコキを切り離して単機となり、宮浦駅の南端へと機回しされます。その後、転線して宮浦駅事務所の少し北辺りに停車し、パンタグラフを下ろして朝の2往復目が終了です。

JR貨物から受け取ったコキを牽いて宮浦へ帰ってきた18号機。

コンテナを工場内へ

45t電機がコキを切り離して駅南端へと機回ししているころ、駅事務所脇に停車していた20トン級 B形電気機関車(以下、「20t電機」という。)が駅事務所の南側へと機回しされます。工場内は防爆のため無架線区間となっているので、電力供給のための電源車が仮屋川方に連結されています。そして、第4便として到着したコキの東側を通って、コキの北側先頭に連結されます。

45t電機が機回しをしているころ、20t電機が動き出す。
20t電機による入換作業が始まる。
コキの車列の工場方に機回しされた20t電機。

これから、コキを工場内へと運び入れるための入換作業が始まるのですが、ここではコキ1両ずつ入換を行うため、まず1両目を切り離し、ゆっくりと工場内を目指します。
宮浦駅を出た列車はすぐに右へカーブし、大牟田川に架かる小さな鉄橋を渡って工場内へと入っていきます。

コキを1両ずつ工場内へと運んで行く。
大牟田川を渡る入換中の20t電機。

工場内での入換作業を終えた20t電機は、また宮浦駅へ戻り、次のコキを工場内へと運びます。
こうして全てのコンテナ車の入換が終われば、午前中の一連の作業は終了です。

2020(令和2)年5月7日の運行をもって三井化学専用線はその役目を終えましたが、電気機関車の今後の動向が気になるところです。